2017/09/05(火)松平元康の定書

  • 戦国遺文今川氏編1455「松平元康定書」(桑原羊次郎氏所蔵文書)


条々
一、諸公事裁許之日限、兎角申不罷出輩、不及理非可為越度、但或歓楽、或障之子細、於歴然者、各へ可相断事
一、元康在符之間、於岡崎、各批判落着之上罷下、重而雖令訴訟、一切不可許容事
一、各同心之者陣番並元康へ奉公等於無沙汰仕者、各へ相談、給恩可改易事、付、互之与力、別人ニ令契約者、可為曲事、但寄親非分之儀於申懸者、一篇各へ相届、其上無分別者、元康かたへ可申事
一、万事各令分別事、元康縦雖相紛、達而一烈而可申、其上不承引者、関刑・朝丹へ其理可申事、付、陣番之時、名代於出事、可停止、至只今奉公上表之旨、雖令訴訟、不可許容事
一、各へ不相尋判形出事、付、諸篇各ニ不為談合而、一人元康へ、雖為一言、不可申聞事
一、公事相手計罷出可申、雖為親子、一人之外令助言者、可為越度事
一、喧嘩口論雖有之、、不可贔屓、於背此旨者、可成敗事
付、右七ヶ条於有訴人者、遂糾明、忠節歴然之輩申旨令分別、随軽重、可加褒美者也、仍如件、
永禄二未己年五月十六日/松次元康(花押)/宛所欠

  • 解釈

一、諸々の訴訟で決められた日限について、とやかく言って出頭しない者は理由を問わず敗訴とする。但し、歓楽であっても不可避の事情であっても、前もって判っている者は、それぞれ断りを入れておくこと。
一、元康が駿府にいる間は、岡崎で各自が検討・決議してから(駿府に)下ること。再度訴訟しようとしても、一切許容しない。
一、それぞれ同心の者で、陣番と元康への奉公などを無沙汰する者があれば、各自で相談し、所領を改易すること。付則、お互いの与力が別の主人と契約することは不法とする。但し、寄親に問題があると申し出る者があれば、一度各自へ届けさせ、それでも判断がつかなければ元康へ申し出ること。
一、万事はそれぞれが判断すべきことで、元康がたとえとり紛れたとしても、断固として『一烈』(諫言?)すべきである。その上で不承知であるなら、関口刑部・朝比奈丹波守にその旨伝えること。付則、陣番の時に代理を出すことは禁止する。現在に至るまでの功績を持って訴訟したとしても、許容しないこと。
一、各自へ確認せずに判形を出すこと。付則、何事でも、協議を経ずに一人で元康に申告したとしても、聞き届けないだろうこと。
一、訴訟の当事者だけが出頭して証言すること。親子であっても、当事者以外が助言するのであれば敗訴とする。
一、喧嘩・口論があったとしても、贔屓はしないこと。この旨に背くものは成敗するだろうこと。
付則として。右の7箇条で訴人があるなら精査し、忠節が歴然の者が言っていることを判断せよ。そうすれば、軽重に従って褒美を加えるであろう。

「一烈而可申」が他例を見つけられず解釈が難しい。「一烈して申すべく」と読んで、強く言い立てること→諫言することと仮定してみた。